プログレの殿堂クラブチッタが自信を持ってお届けする「ザ・ベスト・オブ・イタリアン・ロック」シリーズの特別編。クラブチッタはこれまで「イタリアン・プログレッシヴ・ロック・フェスティヴァル」や「イタリアン・ロック・ヒストリー」といった祭典を何度も開催し成功させてきたが、今回は「ザ・ベスト・オブ」の名のもとに、最上級のイタリアン・ロック・バンド3組が揃った。さらに3バンドとも“初来日公演”という、奇跡のラインナップにも注目したい。どのバンドも70年代のイタリアン・ロック全盛期に名盤と呼ばれる作品を残した強者ばかりであり、これまで長い間来日公演が熱望されてきた。まさに“祝典”と呼ぶにふさわしい豪華なサマー・フェスに期待したい。

メイン・アクトとなるデリリウムは、ニュー・トロルスやラッテ・エ・ミエーレと並ぶジェノヴァ出身の大御所バンドで、豪快で派手なリズム・セクションと、サックス&フルートが炸裂するジャズィな泥臭さが魅力。70年代に残した3枚のアルバムはいずれも高水準の作品で、日本でも人気が高く、特に2作目と3作目はイタリアン・ロック屈指の名盤と呼ばれている。今回のサマー・フェスでは、2日間ともにメイン・アクトをつとめ、初日は『セカンド・アルバム』を全曲演奏し、2日目は『サード・アルバム』を全曲演奏してくれる。もちろん現役活動期間の長い彼らの近作からも代表曲を漏れなく披露する。

初日第1部に登場するセミラミスは、ローマ出身のバンド。彼らは『フラッツに捧ぐ』というアルバムをたった1枚だけリリースして消えた謎のバンドとして、日本でも長く珍重されてきた。デビュー当時は皆ティーンエイジャーだったことや、今やイタリア音楽界のトップ・アーティストとなったミケーレ・ザリッロを擁していたことなど、現在はバンドの歴史やメンバーの素性が判明しているものの、音楽は呪縛的で未だ謎めいた部分が多く、70年代イタリアン・ロックの暗黒面を象徴する魅力的なバンドだと言える。『フラッツに捧ぐ』の全曲演奏と、待望の秘蔵曲が披露される予定。

2日目第1部に登場するRRRことラッコマンダータ・リチェヴータ・リトルノもローマ出身のバンドで、このバンドも70年代にたった1枚のアルバムを残してシーンから消えた謎のバンドだった。RRRのリーダーのルチアーノ・レゴーリは、ミュージシャン仲間からの信頼も厚く、クラウディオ・シモネッティからゴブリンへの加入を依頼されたという逸話も残っている。エネルギッシュな演奏とハイトーンのヴォーカルが鳴り響く名盤『水晶の世界』が全曲演奏され、さらに復活後の作品からも披露する。

いずれも70年代で一度消息を絶ったバンドだが、70年代のイタリアン・ロック・シーンを語る上では無くてはならない存在ばかりである。このように出演バンドのすべてが70年代の名盤をフル演奏してくれるのが、今回のサマー・フェスの最大の特徴と言えるだろう。

1970年結成。長身のヴォーカリスト、イヴァーノ・フォッサーティを擁したデリリウムは、レコード会社の要請でシングルはポップな曲を演奏し、アルバムはコンセプトを持つ重厚なロックを演奏していた。1972年のサンレモ音楽祭出場曲「ジェザエル」が入賞した後フォッサーティが脱退しソロ活動に入ると、バンド・サウンドはプログレッシヴ・ロックへと方向転換し、セカンド『Lo Scemo E Il Villaggio』('72)とサード『Viaggio Negli Arcipelaghi Del Tempo』('74)とイタリアン・ロック史上に燦然と輝く名盤2枚をリリースしている。その後長い休止期間を経て1996年に再稼働し、壮大なプログレ・アルバムを2作品発表するなど、現在まで現役で活動している。


1970年結成。たった7枚のリリースで消滅したイタリア屈指の秘蔵レーベル、トリデントから登場した謎のバンドとして知られる。マウリツィオとミケーレのザリッロ兄弟を中心に結成された学生バンドだったが、弟のミケーレの類い希な作曲能力と編曲の妙で作られた『Dedicato A Frazz』は傑作となり、この1枚でイタリアン・ロック界を震撼させている。1974年に解散後ミケーレ・ザリッロは著名なポップ・シンガーとなり、ジャンピエロ・アルテジャーニはシンガーから作曲家、プロデューサーとなり、現在もミケーレの相棒として活躍している。セミラミスは2014年に突如パオロ・ファエンツァを中心に再結成し、現在も新曲を携えて活動中である。

1972年結成。クラウディオ・シモネッティ率いるバンド、“ドリアン・グレイの肖像”出身のルチアーノ・レゴーリが、若手ギタリストのナンニ・チヴィテンガとともにラッコマンダータ・リチェヴータ・リトルノ(RRR)を結成、70年代に残した唯一のアルバム『Per...Un Mondo Di Cristallo』は、クリムゾニックな暗黒空間が鮮烈に響く希代の名盤として今でも人気が高い。この1枚を残してレゴーリとチヴィテンガは独立し、すぐにサマディを結成している。その後解散となったが、2010年に突如ヌオヴァ・ラッコマンダータ・コン・リチェヴータ・ディ・リトルノ名義で復活、アルバム『Il Pittore Volante』をリリースし、今も現役で活動中だ。

片山伸 http://www.italianmusic.jp/